もし、もう一度だけ大切な人と話せるとしたら、あなたは何を伝えますか。
「ありがとう」
「ごめんね」
「元気でいるよ」
岩手県三陸の丘の上には、そんな想いを受け止める小さな電話ボックスがあります。
電話線はつながっていません。それでも受話器を手に取ると、不思議と大切な人に話しかけてしまう。
ここは「風の電話」と呼ばれています。
2011年の東日本大震災のあと、家族や友人を失った多くの人がこの場所を訪れるようになりました。そして震災から15年が経った今も多くの人が訪れています。
なぜ、この電話ボックスはここまで多くの人の心を動かしているのでしょうか。
今回は、岩手県大槌町にある「風の電話」の物語と、今も人々が訪れ続ける理由を紹介します。
風の電話とは?線のない電話ボックスの意味

「風の電話」とは、岩手県三陸の丘の上にある電話線のつながっていない電話ボックスのことです。
訪れた人は受話器を手に取り、亡くなった家族や大切な人に向かって言葉を語りかけますが、電話はどこにもつながっていません。
しかし、この場所では風に乗って想いが届くと考えられています。
この電話ボックスを作ったのは、岩手県大槌町に住んでいた佐々木格さんです。
もともとは、2010年に亡くなったいとこへの想いを伝えるため自宅の庭に設置したものでしたが、その翌年に東日本大震災が発生。
多くの人が大切な人を突然失い、言葉を届ける場所を求めていました。
やがて、この電話ボックスは「風の電話」と呼ばれるようになり、静かに全国へと知られていきます。
きっかけは東日本大震災|遺族の思いを受け止める場所
東日本大震災では、約2万人もの命が失われました。
突然大切な人を亡くし、最後の別れの言葉さえ告げることができなかった人は、沢山いたのではないでしょうか。
・最後に言いたかった「ありがとう」
・伝えられなかった「ごめんね」
・もう一度聞きたかった声
そんな想いを胸に抱えた人たちが、この電話ボックスを訪れるようになりました。
受話器を手に取り、静かに語りかける人。
涙を流しながら長い時間話し続ける人。
何も言わず、ただ海を見つめる人。
風の電話は、悲しみを受け止める場所として、多くの人の心の支えになっています。
震災から15年が経った今でも、訪れる人は絶えません。
風の電話の場所はどこ?アクセス方法

風の電話は岩手県上閉伊郡大槌町にあり、三陸の海を見渡す丘の上に白い電話ボックスが建っています。
電話ボックスの中には黒いダイヤル式の電話機が置かれていて、訪れた人が受話器を手に取り、大切な人へ語りかけることができます。
- 住所:岩手県上閉伊郡大槌町吉里吉里(ベルガーディア鯨山内)
※個人の庭園のため、訪問の際はマナーを守ることが大切です。 - アクセス:JR釜石線「釜石駅」から車で約15分
三陸鉄道「吉里吉里駅」から車で約15分 - 車:三陸沿岸道路「大槌IC」から約15分
風の電話は、観光施設ではなく大切な人を想うための場所なので、訪れる際には静かな気持ちで過ごすことが大切だと思います。
静かな風の音を感じながら、ゆっくりと自分の心と向き合う時間を過ごす人が多いそうです。
世界から訪れる人たち|海外にも風の電話ボックスが設置外国人も涙する理由

風の電話は、日本だけでなく海外でも大きな注目を集めています。
イタリア
アメリカ
フランス
韓国
など、海外からこの場所を訪れる人もいるし、日本発の「風の電話」が海外に設置されているところもあります。
風の電話は映画にもなり、海外の映画祭でも紹介されました。
言葉や文化が違っても、「大切な人を失う悲しみ」は世界共通。
そのため、この電話ボックスは
「人の心を癒す場所」
「世界で最も静かな祈りの場所」
とも呼ばれています。
訪れた人の中には、日本人・外国人問わず涙を流しながら長い時間電話を握りしめる人もいるそうです。
人も気持ちは一緒なんですね。
映画になった風の電話
風の電話は多くの人の心を動かし、ついには映画にもなりました。
映画のタイトルは「風の電話」。
震災で家族を失った少女が、旅の途中で風の電話を訪れ、自分の気持ちと向き合う姿を描いた作品です。
静かなストーリーですが、観た人の多くが涙を流したと言われています。
映画をきっかけに、この電話ボックスの存在を知った人も多く、海外の映画祭でも紹介されました。
その結果、三陸の小さな丘にある電話ボックスは、世界中から人が訪れる場所になったのです。
言葉にできない悲しみや想いを抱えた人たちにとって、風の電話は特別な意味を持つ場所になっています。
NHK「風の電話」スペシャル番組の内容と放送日
NHKでは「風の電話」をテーマにしたスペシャル番組が放送されます。
震災から15年となる2026年3月8日(日)
番組では
・風の電話を作った人の想い
・訪れる人たちの物語
・震災から15年の心の変化
などが紹介される予定です。
この電話ボックスが、なぜ多くの人の心を動かし続けているのか。
映像とともに、その意味を改めて考える時間になるでしょう。
震災を経験していない世代にとっても、大切な人とのつながりを考えるきっかけになるかもしれません。
感動エピソード
受話器の向こうにいる気がした
「お父さん、聞こえてる?」
女性は涙をこらえながら、続けました。
「ちゃんと頑張ってるよ。心配しないでね。」
話しているうちに、不思議と父親が受話器の向こうにいるような気がしたと言います。
電話を終えたあと、女性はこう話していました。
「初めて、ちゃんとお別れができた気がしました。」
「たとえ電話がつながっていなくても、言葉にできなかった想いを届ける時間を与えてくれるこの場所で、訪れた人の想いは届くのかもしれませんね。」
小さな男の子の電話
母親と一緒に小さな男の子が訪れました。
「パパ、ぼくだよ。」
母親は外で静かに見守っていました。
「ぼくね、小学校に入ったよ。」
「サッカーも始めたんだ。」
まるで、本当に電話をしているかのように話していました。
そして最後に、こう言いました。
「パパ、また来るね。」
電話を終えたあと、男の子は少しだけ笑っていたそうです。
母親はその姿を見て、涙をこらえながらこう思ったといいます。
「この場所があってよかった。」
「子どもの言葉は、胸に迫るものがありますね。ここは、大切な人と心の中でつながる時間をくれる場所のような気がします。」
最後に伝えた「ありがとう」
男性は津波で妻を亡くしていました。
電話ボックスの中に入り、しばらく受話器を握ったまま黙っていました。
「おい、聞こえるか。」
「お前がいないと、やっぱり寂しいな。」
また、しばらく沈黙が続きました。
「今まで、本当にありがとう。」
「最後に『ありがとう』と心の中にある想いをそっと口に出せる場所があるのは、救いなのかもしれません。」
まとめ|風の電話が今も人の心をつなぐ理由
つらいな~~
この記事を書いていて、とても悲しくつらいです。
岩手県三陸の丘の上にある、小さな電話ボックス。
電話線はつながっていませんが、人は受話器を取り、誰かに語りかけます。
震災から15年が過ぎた今でも、大切な人への想いが消えることはありません。
風の電話は、
「言葉にできなかった大切な人への想い」を届ける場所として、今も静かに存在しています。
そして、訪れた人の心にそっと寄り添い続けています。

